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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第29主日

《A年》
148 遠く地の果てまで
【解説】
 詩編96は、やはり同じ答唱句で歌われる詩編98、および、次の詩編97とともに、王である神(主)たたえ、イスラ
エルだけではなく、すべての民・すべての国がその到来を待ち望むことが言われ、《第二イザヤ》とも表現や思想が
共通することなど、非常に似た内容となっています。この詩編96は歴代誌上16:23-33に同じ詩が載せられてお
り、「人々が神の箱を運び入れ、ダビデの天幕に安置し」(同16:1)たことと関連づけられています。
 答唱句は、作曲者が「時間と空間を超越した表現」として用いる6度の跳躍で、旋律が始まり、これによって、「遠く
地の果てまで」という空間的・地理的広がりと、そこに救いがもたらされるまでの時間的経過が表されています。「す
べてのものが」では、バスが半音階で上行し、それに伴って和音も変化し、さらに、「ものが」で、旋律が再び6度跳
躍し、「すべてのもの」という、量的数的多さが暗示されています。
 「かみの」では、旋律が最高音になり、旋律とバスも2オクターヴ+3度に開き、王である神の偉大さが示されま
す。「すくいを」は、旋律が最低音(ミサの式次第のそれと同じ)となり、救いが地に訪れた様子が伺われます。「すく
いを見た」では、アルトに臨時記号〔Des(レ♭)〕を用いることで、答唱句をていねいにおさめるとともに、ことばを意識
することにもなっています。
 詩編唱は、主音F(ファ)から始まり、上下に2度動くだけですが、1小節目では終止の部分で音が動き、ことばを強
調します。4小節目は属調のC-Dur(ハ長調)に転調しことばを豊かに表現するとともに、そのまま答唱句の冒頭へと
つなぐ役割も持っています。
【祈りの注意】
 答唱句は、解説でも述べた、「時間と空間を超越した表現」として用いる6度の跳躍で始まりますから、この「遠く地
の果てまで」という表現にふさわしく、祈りの声を表現しましょう。ユダヤから見れば、この日本はまさに遠い地の果て
です。この日本にキリストによる救いがもたらされるまで、二千年近い時間がかかりました。しかし、わたしたちは確
かにキリストによる神の救いを見て、それを信じているのです。この確信を込めて、答唱句を歌い始めましょう。その
ために「果てまで」の付点四分音符は十分にのばし、その後一瞬で息継ぎをします。「すべてのものが」は、やや早
目にすると、臨場感があふれます。最後の「が」は、その前の「の」にそっとつけるように歌うと、ことばが生きてきま
す。決して「ものがー」と歌ってはいけません。「かみ」はアルシスの飛躍を生かします。最後の「救いを見た」は解説
でも書いたとおり、アルトに臨時記号〔Des(レ♭)〕を用いることで、答唱句をていねいにおさめるようになっています
から、決してぞんざいにならないように、まことに、わたしたち一人ひとりが「神の救いを見た」という確信を込めたいも
のです。
 詩編唱は、最初にも述べた、この詩編と思想的にも関連がある《第二イザヤ》の第一朗読を受けて黙想されます。
ペルシャの王キュロスは、神が選んだ器でしたが、パウロと異なり生涯それに気がつくことはありませんでした。しか
し、神の救いを証しするイスラエルにとって、イスラエルを捕囚から解放し、神殿を再建させたキュロスは、まさしく神
のしもべでした。それにもまして、大切なことは、この出来事によってすべての人が神を知るようになるために、イスラ
エルは新たな道を歩み始めなければならなかったことです。わたしたちも、日々神のことばに生かされて、「その栄光
をすべての国に語り、すべての民に不思議なわざを伝え」ることが、神から受けた使命です。詩編を先唱するかた
は、特に第一朗読を味わい、できればこの前後の箇所も読んでいただきたいと思います。
 最後に技術的なことですが、各小節で音が変わるところ、特に1小節目の最後のところで、間をあけないで滑らか
に続けるようにしてください。
【オルガン】
 基本的なフルート系の8’+4’を用いましょう。あまり、派手な音色やピッチの高いストップを最初から入れると、黙
想の妨げになりますから、気をつけたいものです。前奏の時も、旋律では「すべてのものが*かみーの」の八分休符
と「か」のアルシスを良く生かしてください。また、「すべてのものが」も、歌うのと同じように、やや accel. すると、会
衆も、だんだんと歌えるようになるでしょう。手鍵盤だけで、弾く場合、半音が続くバスや、最後の小節は、持ち替え
や指を滑らすなど、運指に工夫をしましょう。

《B年》
 46 神の注がれる目は
【解説】
 その詩編の18節から答唱句が取られている、詩編33は、創造主、救い主である神をたたえる賛美の詩編です。6
節の「星座」(ヘブライ語の原文では「軍勢」)は、天にいる神の軍隊のことで、神の栄光を示し、その命令を実行する
ものです。6節には、「神(原文では「主」)」の他に、「ことば」「いぶき」という語句があることから、教父たちは、「こと
ば」=神のことばであるキリスト(ヨハネ1:1)、「いぶき」=聖霊、と考え、この詩編には三位一体の秘義が隠されて
いると考えました。
 答唱句は8小節と比較的長いものです。前半は「神」と言うことばが三回出てくることや、神のやさしいまなざし=
「目」を強調するために、旋律は高い音が中心となっています。特に、「目」は最高音のD(レ)の二分音符で歌われ
ます。二回出てくる八分休符は、次の「神」の「か」をアルシスとして生かすためのものですが、バスは八分休符では
なく四分音符で歌われ、どちらも精神を持続させながら緊張感を保ちます。
 後半の「希望を」では、「きぼう」で旋律とバスの音程が2オクターブ+3度開き、バスのオクターヴの跳躍で、ことば
が強調されています。
 詩編唱はドミナント(属音)から始まり、同じ音で終止し、下一音(Fis=ファ♯)以外はすべて上方音というところは、
グレゴリオ聖歌の手法が生かされています。答唱句、詩編唱ともに、最後は順次進行で下降し、落ち着いて終止し
ています。
【祈りの注意】
 解説に書いたように、答唱句は8小節と比較的長いので、全体に、緊張感を持って歌う必要があります。とは言え、
早く歌う必要もないのですが、間延びすることのないようにしましょう。そのためには、まず、冒頭の「神の」の「の」の
八分音符が遅れないように、言い換えれば「かみ」の四分音符が長すぎないように、と言うことです。最高音D(レ)が
用いられる「目」は、この詩編でも歌われるような、いつくしみに満ちた神のまなざし、十字架の上から、愛する弟子と
母に向けた、キリストのまなざしを表すように歌ってください。高い音なので、どうしても、音を強くぶつけてしまいがち
(「メー」)ですが、そのように歌うと、怒りと憤りに満ちた音になってしまいます。高い棚の上に瓶をそっと置くような感
じで、声を出すようにするとうまく歌えます。
 「ものに」は、アルトが係留を用いているので、やや、rit. しますが、これは、分かるか分からないか程度のもので
す。決して、「あ、リタルダントしたな」と思わせないようにしましょう。後半に入ったら、すぐに、元のテンポに戻しま
す。最後の「希望を」は、少し、テヌートして「希望」をしっかりとこころに刻みましょう。
 最後は、rit. することはもちろんですが、やや、dim. もすると、安心して答唱句の祈りのことばを終わらせることが
できるでしょう。
 答唱句のテンポは「四分音符=88くらい」ですが、冒頭は、これよりやや早めのほうがよいかもしれません。
 詩編唱の4節の1小節目は、音が変わる前と変わってからの音節数が同じですが、後半のほうが拍が1拍多いの
で、最初はやや、ゆっくり入り、「すまい」で少し、小戻しし、すぐに rit. します。
 詩編唱で黙想する第一朗読ですが、ここで預言される主の僕は「自らの苦しみの実りを見(て)、それを知って満
足」します。キリストは今も、いつも、教会とともにいて、この、教会の実りを見ておられ、ミサの中で「多くの人の身代
金として自分の命を献げる」のですが、このミサこそ「人の子は仕えられるためではなく仕えるために来た」具体的な
奉仕の場なのです。
【オルガン】
 答唱句は、どちらかと言うと、やや、明るいストップを用いたいものです。人数によってはフルート系で2’を入れても
いいかと思いますが、あくまでも答唱詩編なので、派手なものは避けるようにしましょう。答唱句の前奏をだらだらと
弾いていると、それは、いつの間にか会衆にも伝わってゆくものです。答唱句の最初、「神の」の「の」をやや、早めに
弾くことも忘れないようにしましょう。また、バスが、四分音符で早く出る前の rit. とバスが出てから、テンポを戻すこ
となど、細かいニュアンスも、大事にすることが大切です。

《C年》
 71 神よあなたの顔の光を
【解説】
 詩編121は、その前の詩編120から始まり、134まで続く「都に上る歌」の一つです。これら「都に上る歌」はエル
サレムで年一回行われる祭りに参加する巡礼者が歌ったもの、というのが、一般的な見方です。他にも、バビロン
(捕囚)からの期間の際の歌(エズラ7:7-9参照)であるとか、神殿の15の階段で、一段ごとに一つの詩編をレビ
人が歌った習慣に由来する階段詩編だという見解もあります。1節と2節は対話の形をとっていて、巡礼者とリーダ
ー、あるいは、祭司ないし若者の父と若者との問答と考えられます。8節(詩編唱の4節)の「旅路」は、直接にはエ
ルサレム巡礼の旅路ですが、キリスト者にとっては、人生の旅路=キリストが歩んだエルサレムへの道、すなわち、
受難を通して復活・昇天へと至る、神の国への旅路と考えることもできるでしょう。
 答唱句は、詩編唱と同じように、各小節最後の四分音符以外は、すべて八分音符で歌ってゆきます。旋律は第三
音のEs(ミ♭)から始まり、主音に降り、神が穏やかにその顔の光を照らしてくださる様子が表されています。旋律も
その他の声部も動きが少なく、特にバスは他で歌われているすべての詩編に共通する、神への信頼を表すように、
主音に留まります。
 詩編唱も基本的にドミナントから段階的に下降しますが、各小節とも終止音は持続音より2度上昇しており、この反
復が詩編唱に緊張感と安らぎを与えています。4小節目の終止の部分は、答唱句の終止の部分と同様に終わって
います。
【祈りの注意】
 答唱句の最初は、mp で始め、1小節目の終わりで、いったん rit. と dim. しますが、2小節目の冒頭で元に戻
し、最後は、さらに rit. と dim. を豊かにして終わります。特に、最後の答唱句は、最初から p あるいは、pp で始
め、早さも、一段とゆっくりします。とはいえ、祈りのこころ・精神は、一段と深く、強くしなければなりません。
 解説でも書いたように、答唱句は各小節の最後の四分音符以外、すべて八分音符で歌ってゆきます。楽譜を入れ
ることができませんので、ことばだけで書きますが、「ー」は八分音符一拍分延ばすところを、太字は自由リズムの
「1」にあたる拍節を、*は八分休符を、赤色の字は音が変わった最初の音を、それぞれ表しています。
 かみよあなたのかおのひかりをー*|わたしたちのうえにてらしてく
ださーぃ
 となります。
 よく聞く歌い方で気になるのは、

 1小節目=かみよーあなたのかおのひかりをー 
 2小節目=わたしたちのうえにーてらしてくださいー

というように「かみよー 」と「うえにー」さらに「さいー」を延ばすものです。「かみよ」の「よ」の後で間があく場合もあり
ます。しかし、延ばしたり、間をあけるのでのであれば、楽譜にきちんとこのように書いてあるはずです(たとえば367
「賛美の賛歌」参照)。「かみよー」ではなく「かみよ」、「うえにー」ではなく「うえに」となっていますから、この「よ」と
「に」は、八分音符で歌い、すぐに、「あなたの」と「てらして」に続けなければなりません。特に、「うえに」は、その後
の「あなた」の「あ」と字間があいているので、あけるしるしと勘違いされることがありますが、ここで、字間があいてい
るのは、楽譜を作る上での技術的な限界から来るもので、決して延ばしたり、間をあけたりするしるしではありませ
ん。実際に、歌い比べてみると、延ばさないほうがはるかに深い祈りとなるはずです。
 2小節目の最後の「ください」も「くださいー」としてしまうと、品がない歌い方になります。「くださーぃ」と、「さ」を延ば
し「い」を最後に添えるようにすると、品位ある祈りになります。
 第一朗読では、イスラエルとアマレクの戦いが書かれています。このようなことが書かれていると、『聖書』や教会
は戦争を肯定するのか?と誤解する人もいるかもしれませんが、そうではありません。『聖書』に書かれている部分も
含め、歴史は神の定められた計画の完成に向かって進んでいます。もし、すでに、歴史が完成していたら、神が歴史
にストップをかけているはずです。しかし、実際には、歴史は進んでいますから、まだ、神の目から見て、歴史は完成
していないわけで、人類も(教会の宣教も)まだまだ、発展してゆくものなのです。言い換えれば、過去も含め、現在
行われていることも、まだまだ、完全ではないということです。話しがそれてしまいましたが、神は常に、ご自身の造
られたものに、目を留めておられ、決して、見放したり、知らん振りすることはないのです。今日の詩編を味わいなが
ら、わたしたちも、神が、いつもわたしたち一人ひとりに心をかけておられることを思い起こし、わたしたちが神の救い
の完成のために必要な力をいつも与えてくださるように祈りたいものです。
 この答唱詩編は、答唱句・詩編唱ともに、非常に繊細なものです。祈るわたしたちも、日本語の繊細さを生かしなが
ら、細やかなこころで祈りを深めてゆきましょう。
【オルガン】
 いつも、この形式の答唱詩編の前奏で注意していることですが、前奏のときも、実際に歌う長さで、音を出すことを
忘れないようにしてください。答唱句のことばや福音朗読の内容を考えると、明るめながら、控えめな音色がよいと思
われます。強い音量や派手な音色は避けたい答唱句です。フルート系の8’、会衆の人数によっては、4’を加えても
よいでしょうが、最後の答唱句は8’だけで、しっとりと味わえるようにすると祈りも深まるのではないでしょうか。






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